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タフらいと誕生物語【第10章】(3)

出陣準備3(101)

 しかし、価格交渉の過程で信頼性や寿命に最も重要とされる放熱設計は、自らの手で行う必要があった。ここでは、量産可能な最高レベルの材料を使い、組み立てのばらつきが出ないような堅牢な設計を施した。

 熱は、その物質が持つ特性でその伝導率が決まる。そこで量産可能な工業製品では、最高レベルのアルミ合金(a6063)という金属を使用した。これは、米国Apple社がスマホやパソコンで使用する金属と同じである。

 その高級アルミ金属の塊を、一つ一つ電球の形になるように削り出した。これは、組み立て不良によるばらつきを抑えるためである。生産地の中国を意識した設計である。

 LEDは、日本を代表する大手メーカーのものを採用した。LEDも使用材料は仕様書には記載していない材料的な微妙な差がある。本来は、この部分は非公開情報であるが、この電球のコンセプトを説明し、寿命に最適な材料を搭載した製品情報を入手することができた。このことにより、世界で最も堅牢なLED部分を搭載することができたのである。

 『LEDは壊れない』この認識に真に答えるためには、ここまでのこだわりを組み込んだ。これは、有限寿命である『電解コンデンサー』を使用していない回路を開発したことによって、初めてこのチャレンジが可能となったとも言えるが、地球環境のために、限りある資源のために、新しい未来の生活のために、たった2人の門外漢が、寒空の下開発し、名前も資金もブランドも、設備もない中で、必死に作った商品がここに完成したのである。

 もし、日本人の遺伝子に『武士道』が流れているとしたら、この商品は、『義を見てせざるは、勇無きなり』そして、知行合一の行動を良しとする日本的な陽明学の賜物である。

 『石に立つ矢』のごとく、南無八幡大菩薩を念じた那須与一のごとく、そして、貧しい 老婆が心を込めて石灯籠に灯した火のごとく登場したこれらの商品は、多くの支援を得て美しく登場した。

 しかし、作るまでが精一杯の状態で、このことを社会に訴えるにはあまりにも力不足で、この意義をしっかりと伝えきれない状態が続く中、またもやたちまち窮地に陥るのである。