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タフらいと誕生物語【第11章】(2)

失望(大海の一滴)

 マーケティングの手法として、『需要を作り出し、そこで販売する』ということが成功のポイントであるなどと言われるが、私達のような小さな会社が最初に取るべき戦略は、『市場が探しているものを供給する』という形がふさわしい。

 そう言った意味では、私は、身の丈を理解せずに無謀な挑戦を続けていることになる。

 つまり、商品の技術性と将来性と規模感と、実力がミスマッチなのである。

 半永久に光るかもしれない照明という夢の技術にも関わらず、表現力や訴求力にも問題があり、商品が出ていかないのである。

 必死の資金繰りの中で行った必死のプロモーション活動も、世の中全体から見ると、大海の一滴にすぎないのである。今度こそ、破滅が音を立てて確実に近づいてきていた。

 『調子は上向きですよ。』何人かの人に私は答えた。この嘘つきめ!自分で自分を罵った。正しくは、『調子は上向きになることを必死で祈っています』だろう。

 しかし、今までたくさんの人たちが心からの支援を惜しまずに協力してくれていた。その人たちに、この惨めな状況を伝えたくはなかった。言い切ってから、それを事実にしよう。そしたら、その言葉は嘘ではなくなる。自分にそれを言い聞かせた。

 今にも人生が音を立ててガラガラと崩れ落ちていく音が聞こえそうであった。私は、自分を責め、そして、惨めであった。孤独でもあった。いろんなよくないことを考えた。良くないとわかっていても、考えるのである。追い込まれた人は、通常の思考方式など、とてもできないと言う事が身にしみてわかった。

 私は、今にも崩れそうになる自分を自分で支えるのに必死だった。なぜなら崩れたら本当に全てが終わるのである。

 『やるしかない』 この言葉だけが私の全てであった。