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タフらいと誕生物語【第4章】(2)

誕生そして挫折

 彼は、私よりも10歳近く若く、色白で神経質そうな顔をしていた。英語もほとんど話すことができない上、彼の中国語はとても早口、かつ専門用語が多く、聞き取るのにとても苦労した。彼は、ある小さなLEDの会社の技術責任者をしていた。LED業界に詳しく、商品や技術的な知識、業界動向にも精通していた。何よりも、価格重視(本当は利益重視の騙し合い)の業界の実態に対して憤りを感じていることは、話していてすぐにわかった。

 私は、彼の人柄に惹かれると同時に、信頼のおける嘘のない人物であるという直感を持った。そしてその直感は、現在に至るまで変わることがなく、むしろ事あるごとに強化されている。

 私は、彼に電解コンデンサーレス・テクノロジーの話をした。彼の目は輝いていた。そして、是非、その開発を自分にやらせてほしいといった。もちろん、私は了承した。私は、彼に回路図を渡し、日本にいる北島との電話会議の約束をして別れた。

 数度にわたる電話会議を行った結果、私たちの技術のコアを理解した彼は、作成すべき電球の仕様を私に確認すると、しばらくして最初のサンプルを持って来た。

 明るさ、寿命、大きさ、全てにおいて当時のLED電球の最高レベルに位置する素晴らしい商品であった。当時の市場に出回っていた同型の商品に比べると、2世代先まで先行している素晴らしい出来であった。

 ついに、私は、過去、全く誰にも相手にされなかった理想の技術を、サンプルとはいえ、現実に形にする事ができたのである。しかも、美しいフォルムと誰もが追随できない性能を伴って!

 私は、その商品を目にして、興奮を抑えきれなかった。自分の力で商品を作ったという充実感と、今まで誰も目にしたことのない夢の技術がその中に入っているという高揚感で、なんとも言えない感動を持って、しげしげとその商品を見つめた。まさに自分の子供のように愛しい存在に思えた。