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タフらいと誕生物語【第5章】(2)

葛藤と決断(母)

 しかし、私は、どうしてもそれを捨てることは、またもやできなかった。頭ではその危険性は十分すぎるほどわかっていた。

なぜなら、この選択は、

『私は、一人の人間として、いかに生きるべきか』

という壮大な問いかけでもあったからである。

『安定か、挑戦か』、『社会への貢献か、自己満足か』、『妥協か、理想か』これらの一つ一つの答えを見つけるためには、“自分がいかに生くべきか”の答えなしにはできないものだった。

 私は、会社の営業としては、かなりの営業実績を上げたスーパーセールスであった。営業でありながら、商品を作りながら販売を生み出していくスタイルでは、自分の横に出るものはいないと思っていたし、ある意味、事実でもあった。

 しかし、昇進昇格には全く恵まれなかった。そして、会社が縮小しだすと、内向きのスマートなスタイルが主流となり、外で活躍するセールスマンの居場所がどんどん小さくなっていくような気がした。まるで、太平の世の中になった、時代遅れの武辺者の古武士のようでもあった。

 

 そんな風潮の中で、生き残るためには、給料のためと割り切って9時から5時まで座り、可もなく不可もなく、仲間内で上司も含む人間関係を重視する生き方が賢い選択だとは知っていた。

 しかし、同時に、自分の人生はこんなもので良いのだろうか。こんなことで定年までの残りの10数年過ごしても良いのだろうかという思いが常に自分の頭にあった。

 ここで何もかも諦めて、周囲に同調して生きていく事が本当に良い事だろうか?将来、もし、この夢のLED電球の話を思い出した時に、自分は一体どんな気持ちでいるだろうか? そこで湧き上がる感情は、間違いなく後悔の念ではないのか?