タフらいと誕生物語【第8章】(1)
出陣準備1(彩)
商品はついに完成した。そして、『(本当は違うのだけど)長寿命のLED』という通念に対抗すべく、『半永久に光る技術』の上に、電球の本来持つ機能である“光”の性能においても、極めて特徴的な商品を用意した。
商品の特徴出しというのは大きく2つあるように私は思っている。
それは、“差別化のための差別化”とも言えるもので、実際のユーザーとは無縁の世界で競争優位に立つ為に行われるものである。今日の電気業界においては、非常によく見られる光景である。
私は、自分の会社ではそういったことは絶対にしたくはなかった。したがって、最初に準備したものは、すべて、LED電球の基本性能に関わる部分の改善であり、差別化であった。
最初の差別化は、『演色性』というものである。
LED電球は、色を映し出す能力がまだ低い。色を映し出す能力のことを、『演色性』というのであるが、これは、以前に、車でトンネルに入った経験を思い出すと、その意味を理解することができる。
オレンジ色に包まれたトンネルの中に入った途端、車の中の色が消えて、オレンジか、黒色になった記憶があると思う。私も子供の頃に、不思議に思ったことがある。それは、演色性の仕業である。トンネルにおいては、遠くから、「ここにトンネルがあるよ」ということを認識させる為に、遠くまで届く光が必要であり、車が走行するのに必要な明るさがあればよかった。そこで、多少暗くても、遠くまで光が届きやすいオレンジ色の波長しか入っていないランプが採用された。オレンジ色の成分しか入っていないので、トンネルに入ると、全てがオレンジ色になり、それ以外の色は、黒にしか見えないのである。
LED電球は、実はまだ演色性が低いのである。だから、太陽の下で見る色とLEDの下で見る色では、色が違って見えてしまうのである。特に弱いのが、『赤色』。通常のLED電球は、青色の発光ダイオードを採用している為に、その反対色である赤色を表現するのが苦手なのである。