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タフらいと誕生物語【第9章】(3)

出陣準備2(火の色)

 点発光の光を拡散させる方法として、透明なガラスや樹脂をレンズのように屈折させて光を広げるやり方を選択した。この方法は、他のLEDメーカーも採用しているが、実は大きな課題があった。この方法は、光を拡散させることはできるのだが、どうしても、解決できない問題があった。

それは、レンズを通すことによって“影”ができてしまうのである。光を壁や地面に映した時に、どうしても光の濃淡ができてしまうのである。

 様々な試行錯誤を行い、レンズの形を検証した。そして花びらのようなプリズムカット構造をとることとした。これが最も影の濃淡ができにくくコントロールしやすい構造であったためである。しかしながら何度やっても影が消えない。そこで花びらの枚数と角度を微妙に調整することによって、影のない美しいグラデーションの光をついに実現することができたのである。

 面白い事に、影の濃淡ができないことのみを追求した結果に出来上がった、電球の内部に組み込まれたプリズムカットレンズは、まるでダイヤモンドカットのような美しさを持った。この結果、(まさしく結果的に)火の色電球は、『照明器具に入れずに、外に出しても鑑賞できる美しさ』と称されるようになった。

 人が生み出すもの、自然界のもので、機能を極限までに追求すると、そこに『機能美』なるものが出てくるというが、火の色電球は、その機能美のほんの一部を体現した、全く新しい商品として誕生する事になったのである。