タフらいと誕生物語【第1章】(4)
夢の技術、ついに実現
私は、ついにこの最後の言葉を言う決心がついた。こんなに時間まで、この寒さの中で、しかも大先輩に対して実験を継続させることはできない、そう思った。(ちなみに北島は、自分からは、一度たりとも『やめよう』とは言わなかったが。)
そして、今まで自分の中に膨れ上がった期待に決別する悲しさに、私は、大きなため息とともに天を仰いだ。本当に天を仰いだのである。その時である、
『あっ!!』
私の目にあるものが飛び込んで来た。それは、実験室の上にある、『蛍光灯』。
私は、慌てて、カバンに入っている、今朝届いた1日遅れの日経新聞海外版(海外は1日遅れで配達される)をくるくると筒状に丸め、その中にiPhoneのカメラ部分を収め、恐る恐る画面を覗き込んだ。
そして、大きな声で叫んだ。
『やったー、できましたよ。見てください、黒い縞々が消えています。
できましたよ。できましたよ。完成です。』
なんと、蛍光灯が放つ、ちらつきがiPhoneのカメラに入って、黒い線が発生していたのである。
しっかりと研究設備の整った日本の実験室ではありえない、そして、そういう設備での実験に慣れていた私達日本人が陥っていた、なんとも基本的な盲点だった。
かくして、これが人類が経験したことがないほど、長く光り続ける電球、そして、世界中から電球のゴミを一掃できるかもしれない夢の技術、『電解コンデンサーレス・テクノロジー』が、世の中に産声をあげた瞬間だった。